ブログ~多様性の小径~


「原発と私たちを考える勉強会」第2回(2011/11/19)のご報告

◆第2回目の勉強会には、原子力工学を専攻している大学院生や、パソコンのメーカーで働いている若い女性、
化学を専門とする元大学教員、体験学習の専門家、国際協力NGOの職員など、多彩な顔ぶれが参加しました。

  

テーマは「テクノロジーと私たち」ということで、
『グローバル・クラスルーム 教室と地球をつなぐアクティビティ教材集』
(ディビット・セルビー、グラハム・パイク著)をもとに、2つのワークショップを行いました。

◆1つ目は、20のテクノロジーを取り上げ、それぞれの技術を確認した後、
最初は2人1組みのペアになり、最後は、全員で輪になって、
20のテクノロジーを、
3つの山(A:「規制も制約もなく自由に使ってもいいと思うモノ」
B:「規制や制約を設ければ使っていいと思うモノ」
C:「一切使ってはいけないと思うモノ」)に分けながら議論しました。

大量殺戮兵器である原子爆弾と無差別殺傷兵器である地雷は、
一切使ってはいけないCの山に入ると、すぐ合意に至り、すんなり分けられましたが、
化学肥料と原子力発電については、Bに入れるかCに入れるか、長い議論になりました。

自動車をBに入れるなら、原発もBに入ると主張する人がいたり、
反対に、原発は、原子爆弾と同じ原理を使っていて、
しかも事故を起こしたのであるから、Cに入ると思うと主張する人とに別れました。
おもしろいことに、Aに入るテクノロジーは1つもありませんでした。

◆2つ目のワークは、野球の星野監督が出演する関西電力の原発推進CMを見て、
6つの観点から議論しました。

1つめの観点は、このCMの提供者は何を狙っているのか・何を思い込んでいるのかということで、
原発はCO2を出さないクリーンなエネルギーであるとCMでは主張しているが、
原発の建設や核ゴミの処理に沢山のCO2が排出されるので、
クリーンさは思い込みにすぎないと理解できました。

その後、原発に賛成している人の観点や反対している人の観点に立って、
CMについて多角的に整理したところ、原発についてあらためて客観的に見直すことができました。

      

 

今後の勉強会では、いろいろな自然エネルギーについても、
このような6つの観点から整理してみたいという意見が自然と湧き上りました。

以下が、参加者の感想です。

○様々な職業、様々な世代の人が集まり、意見を出し合う機会は、普段中々ないので、
とても有意義で貴重な時間を過ごすことができました。
ワークショップを通して、原発についてわからなかったこと、
疑問に思っていたことを整理することができました。(U)

○どんなテクノロジーも、「リスクとベネフィット」のバランス次第と思っていたが、
「責任」の在り方や意味について、新たに考えさせられた。(O)

○(1つ目のワーク)様々なテクノロジーを導入するときに必要な条件や制約について考えることで、
なぜ、原発はダメだと考えるのか、より論理的に説明できるようになった。(F)

○(2つめのワーク)原発を推進したい企業、恩恵を受ける人、被害を受ける人、
賛成・反対の理由など、多面的に考えることで、頭の中が整理された。(F)

○ いろいろな意見や見方があり、議論は面白かった。
「テレビ」などの各技術や、「規制や制限」の定義をどう考えるかで結論が違うし、
切り口(考え方)でも違うということに気がついた。(G)

○ 各技術がほとんどB欄(規制や制約を設ければ使ってもよい)に入ったのを見て、
テクノロジーは一般的に使い方次第で良くも悪くもなるのだと改めて思った。(G)

○ 複雑な問題をはらむ「原発」を「テレビ」などと同列で扱うのはやりにくく、
その場で皆の意見を一つにまとめるのは少し無理があると感じた。
やはり「火力発電」など同レベル(?)の技術と比較する方が、論点が明確になるのではないか。(G)

○テクノロジーについて、整理分析することにより、客観的に原発について考えることができ、有意義だった。(K)

○テクノロジーの問題を考えていくと、
経済・社会・政治との関係で論じるべき観点がたくさん出てきて考えさせられた。
次回は、原発ではなく、自然エネルギーの可能性について討議してみたい。(A)

★次回3回目は、「Listenいわき」(http://www.shaplaneer.org/listen/index.html)の
会期中(2011/12/9〜12/11、会場:ラ・ケヤキ(新宿区内藤町))に、
3.11以後、福島県いわき市で、これでまで長い間、生活支援にあたってきた、
国際協力NGO・シャプラニール=市民による海外協力の会の内山さんのお話をじっくりお聴きする予定です。

コメント(閉鎖中) (3)

  • フーちゃん 11-11-21 (月) 19:56

    とても興味深く読ませていただきました。

    規制も制約もなく、自由に使っている(あるいは、使っていると感じる)テクノロジーってなんだろう…。と、ちょっと考えてみたくなりました。
    例えば、このインターネットっていうテクノロジー、何かものすごい想像もつかない事故・事件が起きて初めて人類が後悔するっていうことにならないのかしら…。

    むむぅ、秋の夜長に相応しい命題ばかり浮かんできそうです。

    それからね、巨大隕石がやって来たとき、原子爆弾って使ってはいけないと思う?
    (ごめんなさい、変な質問で締めくくって)

  • AZUU 11-11-21 (月) 20:07

    フーちゃん さすが理系、秋の夜長にふさわしいコメントありがとう。
    別のところでこのワークショップをやった時、20のテクロジーは、16まで用意しておいたのですが、残りの4つはペアになった参加者に考えてもらいました。
    「規制も制約もなく使っていいテクノロジー」には、メガネが入り、また、インターネットは、当然「規制や制約を設ければ使ってよいテクノロジー」の山に分類されました。

    原子爆弾は、一切使ってはいけない、と私は思います。7世代先まで放射性物質の影響があるでしょうからね。その代わり、隕石がやってくることを予知できるテクノロジーは持っているでしょう、この世界は。
    これ以上は、このブログを読んでいる誰か、皆さんからのコメントを待ってみましょう。

  • AZUU 11-11-21 (月) 20:11

    FACE BOOK の「いいね」ボタンが13にもなりました。
    (どなたかは分からないけれど)読者の皆さんがこんなにいて、なんだか、うれしいです。

大学での教育や共育ファシリテーターとして思ったことなど、日々の思索をつづっていきます。 価値の多様性を尊重し、さまざまな意見に出会いたいとも思っています。 お感じになったことは是非コメントをお寄せください。よろしくお願いします。

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