ブログ~多様性の小径~


腰痛・指圧、そして、ファシリテーション

3月3日、バングラデシュから無事に帰ってきた。
それは、私の中では、バングラデシュに無事行けた、ということと同義である。

2011年12月28日に、ぎっくり腰をやったからだ。

秋からの長い長い原稿書きの仕事を終えて、椅子から立ち上がったとたんの出来事で、
魔女の一撃とはよく言ったものだ。
翌日、這うようにして整形外科のクリニックに駆け込んだのはいうまでもないが、
そこでは、痛み止めという名の麻酔注射をされるだけの完全な対処療法を受けた。

1月2月と、大事な予定を抱えていた私は、本当に一日も早く治したかった。

そこで、私は、東洋医学に頼った。

指圧である。

しかし、指圧とて、即効性は無い。
しかし、急がば回れの気持ちを大事にした。
そして、何より、この事故から回復に向けて、
伴走してくれる介添え役がほしかったのだ。

治療方針として、痛みの出にくい体を作っていくと、説明された。
そして、焦らないように、体は日々変化する、と申し伝えられた。

椅子から立ち上がった事はぎっくり腰の引き金になったが、
きっかけに過ぎないとも。
それ以前からの無理が重なって、
たまたまその時に腰痛という形で表に出たのだという。

 

指圧師はZ氏という。
若いが10年以上のキャリアがあり、両親ともに指圧師という環境で育ったそうだ。
大学では心理学を専攻し、ワークショップのファシリテーションもしている。

 
指圧とファシリテーション、Z氏の中ではその2つがつながっている。

 
私も彼の指圧を受けるうちに、
自分の身体の事に無頓着ではいられなくなった。

10代20代の頃は山登りをしていた私だが、
ここ十数年は、身体づくりには縁のない生活を送っていたことを反省した。

初回、太ももを指圧されると、お腹がぐるぐるキュルっと、忙しく音を発した。
お腹に弱みがあることが看破された。
西洋近代医学的に言うところの過敏性大腸炎。
ストレスから来る便通の不調である。

次に指摘されたのは、右足首の捻挫である。
20代に尾瀬の木道で滑って捻挫し、
30代はラオスの森の中で捻挫して手当てができないまま下山を余儀なくされ、悪化させた。
それ以後、右足首の捻挫は癖になっている。

そのせいで、左右の足首の硬さが異なるのである。
そこに腰が乗っている。不具合にもなるわけだ。

まいったなぁ。

腰を身体全体から診るのだ。

腰痛の部位そのものにアプローチするのではなく、
その不調の原因となる不具合全体に手を入れて行く。

まるで、これは、ファシリテーションだ。

腰痛がコンテンツそのものだとすれば、
ファシリテーションでもある指圧は身体のプロセス全体にアプローチしていく。

Z氏は、腰痛にも配慮しつつ、
私の身体全体の働きを復調させていくことに腐心した。

そう、痛みは、刺すような疼痛から徐々に鈍痛に変わっていった。

それでも、雪の降る日にヒールのあるブーツを履いて、収まっていたズキズキがぶり返したし、
大学の講義のために本と資料の入った重い荷物を持って、再度ズキズキを起こした。
これは、私自身の失敗である。

3度目の失敗は繰り返せない。

1月の女神山のインタビューの合宿と、
2月の福島県いわき市の被災地訪問はあきらめざるを得なかった。

しかし、焦ってはいけない。
私は、自分の治癒力と指圧の効果を信じることにした。
2月11日、整形外科でもらったコルセットは、自ら取ってしまった。

そして、自分で正しい姿勢で歩く事に熱心になった。
丹田を意識するのである。そうすると、腰への負担は減った。

 

ファシリテーションは、参加者の持てる力を引き出すことにある。

引き出すからあふれ出すへ・・・・・。

 

そう、私の治癒力も引き出されたかのようであった。

治癒力と言っては大げさだとすれば、

私は自分自身の身体を意識する身体へと変わったのである。

 

丹田の威力を発見してからは、歩くことが苦痛ではなくなった。
腰を伸ばして、腰を生かして、歩く。それができるようになった。

ドイツの石畳でも腰に響かないという靴も活躍してくれた。

そうして、腰が軽さを回復し、2月20日、成田空港までたどり着いた。
バングラデシュでは、ほとんど痛みを意識することはなかった。
もちろんスーツケースなどの重い荷物を持つことは避けたが、
フィールドワークに必要な最低限の荷物は自分で持てた。

そして、無事に帰ってきた。

この腰痛についてのブログを書かないことには、
バングラデシュの報告はできない。

それくらい、私にとっては、大変なことだった。

腰痛とファシリテーション。
頭でっかちな私が、またひとつ、身体に自覚的になった。

どちらかといえば、コンテンツ過剰人間の私が、
身体全体のエコシステムを考えるようになったのである。

 Z氏、ありがとう。そして、これからもよろしく。

 自分という自然を生かす。

それを地で行こうと思った次第である。

春は近い。

 

 

コメント(閉鎖中) (2)

  • きくあつ 12-03-13 (火) 20:42

    AZUU
    お疲れさま、
    そんなドラマがあったんだね〜
    しみじみと読んでしまいました!!

  • AZUU 12-03-14 (水) 10:17

    きくあつ  しみじみしてくれたとのこと、ありがとう。
    2月は1回もブログを更新できなかったのだけど、毎週、指圧に通って、なんとかバングラデシュに行ける身体を作っていました。ギリギリ間に合ったという感じです。
    今は治った感でほっこりしていますが、今後は、再発防止に努めます。

大学での教育や共育ファシリテーターとして思ったことなど、日々の思索をつづっていきます。 価値の多様性を尊重し、さまざまな意見に出会いたいとも思っています。 お感じになったことは是非コメントをお寄せください。よろしくお願いします。

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